雨の思い出とそれから・・・

子供の頃のある夏の日、1人で傘を持たずに出かけ、通り雨にあった事がある。初めはどうしようかと思ったけれど、どんどん雨は激しくなり、服や髪の毛から雫が垂れるくらいのずぶ濡れになったら、なんだか可笑しくなって空を向いて笑ってみた。そうしたらますます楽しくなり、その後は雨を跳ね散らすくらいの勢いでスキップしながら家に帰って玄関で母を呼ぶと、母も怒りもせず、「ずいぶん盛大に濡れたわね。家の中まで濡れると困るからそこで服全部脱いじゃいなさい。」と割合とのんきな風で言われ、玄関で素っ裸になって、そのまま風呂場に連行された。暖かいシャワーを浴びた後の乾いたタオルと着替えが気持ち良くて、雨に濡れるのもそんなに悪くないものだと思った。
雨の日、初めは足元が濡れないように気をつけているんだけど、ウッカリ水溜りの中に入って運動靴の中まで水が浸み込んで来たりすると、えーい!とわざと水溜りでバシャバシャして靴の中も靴下も大変な事になって、足踏みすると靴の中の水が逆流してグチュグチュするのは、滅多にはしなかったけど、やり出すと気持ち悪いような気持ち良いような、なんだかやめられない楽しさがあった。もう小学校の高学年位になれば、堂々と泥んこ遊びは出来ないけれど、雨の日だけは小さな頃の泥んこ遊びの延長みたいな事が出来るのが楽しかったのだと思う。
自分に子供が生まれて、毎日のように公園に遊びに出るようになり、あれは長女が2歳を少し過ぎた頃だったか、梅雨時のある日やっと雨が止んで待ちかねたように公園で遊んでいたら又雨が降って来てしまった事があった。帰ろうとしたが、久しぶりに公園に来た娘は嫌だと言ってきかない。その時一緒に遊んでいた公園友達の月齢が同じ男の子と二人で雨に濡れてもはしゃいでいる。幸い気温も高いし、小雨だったので、ちょっと位は良いかと覚悟を決め、傘を差掛けつつ付き合うことにした。2人の悪ガキはしばらく水溜りの中でバシャバシャしたり、それはそれは狼藉の限りを尽くした後、当時公園のすぐ横のマンションに住んでいたので昔のアタシのように玄関で全部の服を脱がせてお風呂で暖かいシャワーを掛けて温めてやった。
その時の服はどんなに洗っても泥んこが取れなくて捨てるしかなくなってしまったけれど、2人の楽しそうな姿は子供が小さい頃の忘れられない思い出の1つになっている。
とにかくアタシは総じて子供の頃から雨の日の好きな子だった。特に台風の時など不謹慎なのだが、子供心にはかなりワクワクするものがあった。大きな落雷の音や稲光が大好きだった。だってドキドキするじゃない?
今ではまずないことだけど、アタシが子供の頃は台風が来ると停電する事が良くあった。そうするとTVも観られないし、ちゃぶ台の上のロウソクの灯りを何するともなくじっと見てるのが好きな子だった。
ある日とりわけ大きな落雷があって、ずいぶん長いこと停電したことがある。家の前の古い木の電信柱に雷が落ちたのだ。翌日見ると電柱の上のところに燃えたあとがあって、あの時はずいぶんと興奮した。
我が家は建築屋だったので雨が振ると仕事が休みになることが多く、近所のアパートに住んでる若い大工見習いのお兄ちゃんに部屋でギターを弾いて貰ったりして遊んで貰えるのも楽しかった。
実はアタシはかなりの雨女でここぞって時に雨が降ることがかなり多いのだけど、新婚旅行でラスベガスに行った時に土砂降りになったのには驚いた。なにしろラスベガスと言えば砂漠の真ん中で年に数えるほどしか雨なんて降らない土地だから、そんな場合の対策がなっちゃいない。ホテルはずーっと停電。勿論非常用の自家発電はあるのだが、カジノのまばゆいようなネオンをすべて灯せるほどのものではなく、最低限の薄暗い灯りの中で過ごしたり、ホテル内のレストランに行けば雨漏りして、天井から雫がテーブルに垂れて来たり。次はいつこんな大雨が降るか判らないのでわざわざ雨漏りの修理なんてしないのかも?
でもそんなことも滅多に体験出来ないことだし、何しろ帰ってからのお土産話でもこのエピソードが一番皆にウケたし、とても楽しい思い出だ。
そう言えば子供達を連れて初めて東京ディズニーランドに行った時も暴風雨の日だった。遠方に住む友人家族が我が家に泊まりに来て、一緒に出かけるプランをずっと前から組んでいたのでやめることも出来ず「雨女でゴメンねー!」なんて言いながら、大雨の中を車で向かった。何しろ相当な悪天候なので道は空いていてスイスイと進み。割と近くの便利のよい駐車場に止めることが出来たのだけど、車を降りて傘を開いた途端、強風で傘が折れ曲がってしまった。これは傘を差してもしょうがないとあきらめて、風は強かったが雨はやや小止みになっていたのでそのまま入場した。雨が降ってるのでまずは屋根のある場所って事でお土産屋さんが並んでるところへ行くと、雨だから居られる場所に限りがあるからだろうか?ディズニーのキャラクター達がウヨウヨ居る!オマケに悪天候でお客は少ないし、写真撮り放題。子供達のテンション上がる上がる。アトラクションもガラガラだから屋根のあるところから順にどれもほとんど並ばずに乗り放題。午後になり雨が止んでパレードも観る事が出来たし、もうディズニーランドに行くなら悪天候の日に限る!
こんな風に大人になって相変わらず雨は嫌いじゃなくて、特に雨に濡れてもかまわない状態になるのがかなり好き。と言う結構な変わり者になってしまった。
少し前まで勤めていたバイト先が我が家からは非常に交通の不便なところだったため、ずっと自転車で通っていたのだが、雨の日はレインウェアを着てもどうしても濡れてしまって、寒い冬の日等は結構大変だったのだけど、それでも続けられたのは基本的に雨に濡れることに苦手意識がほとんどない為だと思う。
そんな雨女のアタシが雨に濡れても楽しいことと言えば野外ライブもその代表的な1つ。土砂降りの中のライブでまず思い出すのは、初めてエレカシを観た2000年の野音。ライブ慣れしている友人に大きなごみ用のビニール袋を貰ってそこに全部の荷物を入れてギュッと口を縛りレインコートを着込んで戦闘開始。日比谷の野音は都会のビルの谷間の異世界のような場所だけど、その野音で激しい雨の中雷鳴が轟き、それが最高の無作為の演出になって、ステージに立つ宮本のカッコ良さと言ったら!あれは一生忘れられないと思う。野外ライブは天候も込みで楽しむものって言うか、困難な状況だからこそたぎるものがある。そんなライブってすごく貴重で、好天気では味わえない特別なものだと思う。勿論好天気の野外ライブも楽しいけれど。
エレカシの去年の野音のDVDを観てる途中なのだけど、24日はかなりの雨で元々この日は記録用のカメラしか入っておらず、25日の方のみがプロのカメラで撮影されていて、本来は25日だけが発売される予定だったとか。しかし映像を見たら24日の雨の中のライブが非常に緊張感があって良いので急遽2日とも出すことにしたそうなのだけど、確かに記録用のビデオカメラで撮ったものだからけして高画質とは言えない。しかしそんなことはたいした問題ではない。それどころか凝った美しい映像よりもライブの臨場感が伝わって来るようで。激しく降る雨がエレカシのカッコ良さをますます引き立てていて、なんて言うか、これほど雨の野音の似合うアーティストってそうそう居ないのじゃないだろうか?これは発売してくれて本当にありがとうございました。今まで買ってなくて本当にごめんなさい。でも実際にライブに行った人はきっとすごく寒かったはず。なにしろ10月の終わりだもの。でもそれでもアタシもこの日の冷たい雨に濡れたかった。心底本気でそう思う。

エレファントカシマシ 2009年10月24,25日 日比谷野外音楽堂(完全初回限定盤) [DVD]

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これはホントに買い!ですよ。