同い年でした

装苑 2016年 12月号 [雑誌]

装苑 2016年 12月号 [雑誌]

装苑て今年で創刊80周年なんですね〜。
母と同い年だったんだ!って今回初めて知りました。

母はとても腕の良いプロの洋裁師だったので昔は毎月装苑を買っていて子供頃のアタシはそれを見るのがとても楽しみだったの。

やがて年頃になると装苑に載ってる洋服を「これ作って〜」「次はこっちね〜」
何て言って、どれでも選び放題でした。
それがどんなに恵まれたことなのか昔はあんまりわかってなかったなあ。

成人して自分で洋服を買うようになるまで母の手作り以外の洋服は着たことありません。

それこそスウェット地でTシャツもトレーナーも作ってくれたのよね。
中学のセーラー服も高校のブレザーも母が縫ってくれましたし、子供の頃のウールの着物や夏の浴衣も母がミシンで縫ってくれたので。

母自身も装苑に載ってるような洋服をいつもカッコ良く着こなしていて(女優の原節子に良く似た)美人でセンス良くて子供の頃は本当に自慢の母でした。

学校の行事に母が来ると、スッと背筋が伸びててスタイルも良く、最先端のデザインの洋服をバリっと着こなしてるからとにかく目立って、
みんなが「あれ誰のお母さん?まるで女優さんかモデルみたい!」って大袈裟じゃなく騒然となるくらいで。

友達から「全然似てないし美人過ぎるよね。本当のお母さんなの?」って何度言われたことか。

アタシ自身も本当に自分のお母さんなのかな?って思ったこともありました。

美人過ぎる母親を持った凡庸な容貌の娘の複雑な気持ちってわかります?

嫉妬とかそういうのでは全然ないの。だって初めから勝負にならないから。そう思い込んでしまってるから。

今にして思うと勿論母は間違いなく美人なんだけど、絶世の美女って程ではなく、スタイルとセンスが良くて地方都市には珍しく最先端のおしゃれな洋服を体にジャストフィットの良い仕立てで着ていたからとても目立ったんだと思います。


自分も年頃になって、おしゃれしたりお化粧したりするようになると、
年頃の女の子ですからそれはさ、「美人」とか「センス良い」とか、、まあお世辞半分にでもそーゆーことを言ってくれる人もチラホラ出て来たリするじゃない。
それは誰にでもある事よね。若い娘が男性からチヤホヤされなかったらね〜。

でも子供の頃から散々言われ続けて来た刷り込みってなかなか抜けないもので、
母親と比べたら自分なんて〜。ってとにかく自己評価めっちゃ低いので。

おまけに母は洋裁っていうゆるぎないモノを持ってる人だから強いんですよ。いや気は優しいし、全然怖い母ではないんだけど、芯が通ってるというか。

アタシには母親の洋裁のような「これだけは誰にも負けない」ってものがあるわけでもないしホントに中途半端に生きてるよなあ。って鬱々たる気持ちがあるんで。

一方父親はというと遊び人で浮気者で仕事も要領は良いけど結構いい加減で。
本質的に悪人ではないけど、実は弱くてその裏返しで虚勢を張っちゃうような人だったから〜
母親は本当に散々泣かされて来て、でもアタシは母親よりはそんな父親に多分似ているのよね。

だから自分は母親にとって足かせじゃないのか?とか、
父親似の自分は母親からは心底愛されてないのじゃないか?とか、
とにかく屈折しまくってたんですよ。

本当はアタシも洋裁したかったのかもしれない。でも母にはかないっこないと思ってあきらめちゃったのかも。

17才の時に母に教えてもらって裏付きのウールのワンピースを縫いましたけど、それ以降本格的な洋裁はやってないかも。
子供服とかも散々縫ったけど、誰でも縫える〜みたいな型紙付きの本を買って来てだったし、本格的な自分でパターンを起こしてみたいなのはなんかあきらめちゃったから。

今ちょこっと手作りのものを値段付けて売ったりしてるけど、お金貰えば誰でもプロって考え方もあるのにその覚悟が持てないのは母親を見て来たから、プロってそんな甘いもんじゃないって思ってしまうからで。

母も齢80を迎えて、そりゃもうどこからどう見てもお婆さんなんですよ。

でもまだまだおしゃれだし、背筋もピンと伸びてて、毎日一時間ウォーキングして、洋裁も未だに母じゃないとって洋服作って欲しがるお客さんがいて、お友達から頼まれて洋裁教えたりもしてるらしい。

それだけじゃなく母はアタシの妹一家と同居してるのだけど料理担当で買い物も献立考えるのもメインは母。勿論それ以外の家事も妹と分担してこなしてて、
未だに主婦としても現役なんです。もうすごいわ。
ホント敵わないわ。

もうね、一回りしてやっぱり自慢の母親だなってこの頃は思うわけ。

この間母の誕生日にカードを送ったら母から電話がありました。
その時装苑てお母さんと同い年で今年創刊80周年なんだって。と言うとちゃんと記念号買ってた。
未だに勉強になるからって装苑も時々は買ってるんですって。
そんな80才ってカッコよすぎだから〜。

でね、その母からアタシが若い頃譲って貰った着物があるんです。
元は母がまだ20代前半の娘時代、今から60年近く昔に自分で見本帳で柄を選んでオーダーで染めて貰ったという付け下げで、母自身が自分でお金も出して作った着物。

黒地にモザイク調の薔薇の柄のとってもモダンでカッコイイ着物で、アタシはそれが欲しくて当時50手前の母にねだって譲って貰ったの。

元は赤い八掛が付いていたのだけどその時洗い張りして薄いピンクの八掛に取り換えたので今でも着られるのー。当時の地味好みの自分エライ!

アンティークの着物が好きでいろいろ見るけどこんなお洒落な着物そんなにはないと思う。ものすごく高価なものではないけれど、やっぱり母はセンス良いなあ〜!

まだ20代前半の若い娘が黒い着物だなんて、と祖母(和裁師でした)からはさんざん言われたらしいです。

でも自分で自分の好きなものを自分のお金で作るのが何が悪いの?って押し切ったんですって。

あははは!やっぱりアタシと母親似てるのかも。

アタシも若い頃から誰に何て言われても自分の好きなものを自分で選んで着て来たもの。勿論働き出してからは着物もほとんど自分で作ってたし。毎回のボーナスごとに一枚づつね。

明後日はその着物を着ようと思います。
沢山の着物女子の皆さんにアタシの自慢の母親から譲られた着物ですって自慢しちゃおうと思ってます。
母が自分で選んだ図案、選んだ色の着物を。カッコいいでしょ?って言って。