残酷な生き物

うさぎとちょこれいとさんとこでjanvierさんとyukattiさんがお話してるの見てhttp://d.hatena.ne.jp/janvier/comment?date=20070509#c
ムラムラと読みたくなった本。*1

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

いや、これ高校生の頃にも読んでるんですが、その頃は退屈な小説としか思えず・・・。
小学校高学年から中高生にかけて1番好きだったミステリィ作家がアガサ・クリスティーで、ポアロ最後の事件のカーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)が発表されたのがちょうど中三の冬でリアルタイムで買って読んだ記憶があるから、中学くらいまでで彼女のめぼしい作品はほとんど読破してて、春にして君を離れがミステリィじゃないことも知ってたけど、それでもクリスティーの作品ってだけで、読んではみたものの、当時のお子様なアタシにはこの小説は大人過ぎたんだよなあ。
自分が主人公ジョーンと同じくらいの年齢になった今読み返してみて、しんしんと心が凍るくらいの怖さを感じました。ミステリィにおいてもクリスティーの上手さってのは際立っていて、何がすごいって人間の観察力とその描写力がすごいんだよね。だからこれと言ったトリックが使われてないような作品でも、巧みなミスディレクションで読者を実に上手いこと誘導して読ませちゃう。
おそらく20世紀最高の流行作家であろう彼女だけど、もしもミステリィを書かなかったのなら?なんて事を考えてしまうくらいのすごい小説でした。この「春にして君を離れ」は。

大抵の人は程度の差こそあれ、ジョーンのような部分を持ち合わせていると思うのよね。「貴方のためを思うからこそ〜」って言いながら実は自分が可愛いだけみたいなさ。そしてこの本を読んで、それに気付ける自分にどこかでホッとして少しだけ救われた気持ちになれる。『だから自分はジョーンとは違うんだ』と思って安心する。
それもまた恐ろしいことだよなあ。人間って自分よりも悲惨なものを見て安心する残酷な生き物なんだってこと?クリスティーって本当にどんだけ怖い人なんだろう。

*1:お二人の読まれてる本はいつも参考にさせて頂いてます。大聖堂すごく面白かったです。