『MOZART!』感想とかそんな風なもん

ヤバイですよ。中川くんのソロ一曲目「僕こそミュージック」でいきなり涙出そうになっちゃった。
今回再演なんだけど、アタシはこの舞台を観るのは初めてで、でもモーツアルトの運命の大筋は知ってるから楽しいばかりの話にはならないだろうってことは想像出来るじゃない。SHIROHの時もうっすらと思ったんだけど、アタシは中川くんみたいな歌い方は普段アタシが好きで聞いてる音楽から言ったらまるで好みじゃないんだよね。ねちっこいっていうか語尾にひねりをつけるようなのも普通に音楽だけで聞いてたらヤダと思う。
でもこれがミュージカルで舞台に立つとどうして?って思うくらいに惹き付けられてしまうの。お世辞にもカッコイイてのとは違うし、ルックスはねえ・・・(あえてこれ以上は申さず)SHIROHの時もそうだったけど、中川くんの演じる役は飛び抜けた特別な力や才能を持っているのだけれど、人間としては非常に不安定だったり未熟だったりして、だからこそ、そんな不完全な部分がある意味すごく人間的な、そういう危うさが逆に魅力となるような役。
それを彼は演じてるとかじゃなく、役の心そのままになって舞台に立ってる感じなの。だから歌も
中川晃教としてじゃなく、その役の心で歌ってる。これって当たり前のようでなかなか出来ないことで、良くミュージカルを苦手と言う人が「いきなり歌いだすのが受け付けない」ってことを言うけど、本当にその役の心になってれば、そしてそれがちゃんと観る人に届いていれば何の問題もないはずなのよね。
まず彼くらい上手く歌えれば「聞かせてやろう」的なものになってしまいがちで、でもこれはコンサートじゃなく芝居。そこなの!歌も芝居の内なのがミュージカル。だからどんなに上手くても役の心が伝わってこなければ役者じゃなくて歌手でしかないのね。
で、アタシは歌手の中川くんにはほとんど興味をもてないんだけど、役者の中川くんのことは相当に好きです。そりゃこの役で数々の演劇賞を総なめにしたってわかるよ。歌が上手いだけじゃなくて舞台で演じることの本質を彼は本能的に知ってる人なんだと思う。
しかしこんなすごいのを見せられて、そしたらダブルキャストでもう一人の主役も中川くんとはまるで違うタイプでありながら甲乙つけがたいくらいに素晴らしいって言うじゃない。
もう観るしかないよな。チケット代地獄覚悟で、で中川くんのも井上くんを観た後でもう一度後半に観たい!もう制作サイドの意図のままに踊らされております。
勿論良いのは主役だけじゃないです。まずはかつてのアタシの王子様だった市村正親さん。この方が老け役をなさるようになるとは、そりゃあアタシも年取る筈だわ。
かつては舞台の真ん中でいつも一番ライトの当たる役をやっていた彼が脇で支える役に回ってて、でも格が下がったとか、そんなんじゃなくて、余裕で嬉々としてそれをこなしてる感じ。前回の公演後「屋根の上のバイオリン引き」の話が来た理由ってのがすごく良く判った!以前の市村さんしか知らないものからしたら、彼がテヴィエ?って思ったけど、この舞台のパパ役を観たらそりゃあ頼むわ。好評で当たり前だろうって即納得。本当に味のあるいい俳優になったなあ。それをこうして再び舞台で、それも素晴らしい共演者と共に観られる幸せ。
そして山口さんのコロレド大司教さま。朗々と響き渡る声。相変わらず歌が上手いのは元々だけど、傲慢でねたみ深くて根性悪い暴君も山口さんが遣ると何だかちょっと可愛いい、でも貫禄は勿論さすがの存在感。ちょっと太ったのが残念でありますがこの役に限ってはOKだね。
このベテランのミュージカル畑を歩いて来た大先輩の輝くスター2人がある意味この舞台の屋台骨的存在になってるんだよね。
そして女優陣の中でピカイチはやはり高橋由美子さん。彼女がアイドル時代も可愛くて好きだったけど、こんなに良い女優さんになるとは思いもよらなかった〜。あの「ミッキーマウスになりたい」とかのたまわっておられた方がねえ・・・(感慨しきり)SHIROHの時も思ったけど艶があって伸びがあって、素直なんだけど情感の篭もった声が素晴らしい。声量も文句なし。更に無言の演技の場面でも何度かはっとさせられるシーンが。又観て確かめたい場面多数。
中川くんと市川さんと由美子ちゃんは3人共小柄なんで3人が揃ってるシーンはなんかカワイイというか。
妻役の西田ひかるはちょっと声量が惜しい。こーゆーのって音響さんの仕事でなんとかならないのんなの?初演は松たか子だったんだよね。それもちょっとも観たかったかも。でもこの役には彼女じゃ強すぎるような気もする。本当か嘘か知らないけど、元々主演は井上くんと山本副長の予定だったのが松たか子とのアレコレがあったので出られなくなって急遽全く未知数の新人の中川くんのところに回ってきたんだとか何かで読んだけど本当なのかな?嘘だとしても実に良く出来てる話だよねえ。

最後にアマデ役のちいさい黒沢ともよちゃん。見た目はカワイイんだけど、とっても怖い役。上手いの。すごい。セリフは一言も無いんだけど、存在感出しまくり(そう言う役なんだけど、だからって誰でも出来るもんじゃない)セりふがないからこそ手も気も抜けないんだよね。

あ!忘れてた!アンサンブルの方達。SHIROHの時もかなり感激したけど、良かったと思います。東宝さんの底力を再確認したような。