助太刀屋助六

岡本喜八監督の遺作となったこの作品。まだ観てなかったのでレンタル。
「近頃なぜかチャールストン」以降の作品は封切り時に劇場で全部見てたんだけど、「EAST MEET WEST」がイマイチ面白く思えなくって(あのキャストあのアイデア&プロットで何故?勿体無かったよねえ)つい観そびれてたんだけど、いやー、面白かったです。日本映画全盛期の出来の良いプログラムピクチャー的魅力に溢れた作品でした。なんと言っても主演の真田広之が実にチャーミング。「ラストサムライ」や「たそがれ清兵衛」の渋かっこいい役も悪くないけど(ここでは感想書いてないけどどちらも観てます)こういうお調子者でお馬鹿なヤクザみたいなのもイイ!「怪盗ルビィ」や舞台の「リトルショップオブホラーズ」みたいなヘタレな役も〜って結局アタシは真田広之が好きだったのか!?今まであんまり意識してなかったけどどうやらそうみたい。ああ話が脱線しちゃったよ。
助六は24歳って設定だそうで、それを文句言う人は時代劇プログラムピクチャーのお約束がわかってないわよ!それにあの体&動き全然アリだと思うけどなあ。これだけの肉体を常時維持してるなんて素晴らしい(白いパッチから出た太ももを観てきゃあセクシー!とドキドキしちゃったのはここだけの秘密)岡本監督の師匠のマキノ雅弘木枯らし紋次郎みたいに汚い格好したヤクザなんて!ヤクザは見得を張るのが商売だからいつでもバリッとした格好をしてなきゃダメだみたいに言ってたけど、まさに故郷に錦を飾ろうと派手派手な絹の着物(左右違う柄のはぎ合わせでさらにわざと奇抜な裏地をこれ見よがしに端に覗かせる特別な仕立て)を着て粋がってるのを観てるだけでこっちが嬉しくなって来る。脇にも良い役者を揃えてるし天本英世を筆頭に喜八組の常連役者がちょこちょこ出てるのが楽しい。ストーリー展開はこれ見よがしの伏線であるとか展開が手に取るように読めるんだけど、あえて突っ込まずに肩の力抜いて観たらいいんちゃうん?さすがに鈴木京香のあの役はちょっと無理があるような。岡本喜八の好みの女優なのかもしれないけど、あの役は若くておきゃんな可愛さがあればそれほど演技力はなくても大丈夫な役なんじゃないの?彼女を使わなきゃいけないのだったら(映画館に客を呼べる女優ってことで)役の設定を修正したら良かったのに。同い年ぐらいの設定でもうちょっと蓮っ葉な感じで岸部一徳なんか手玉に取ってやろうじゃないくらいの鉄火な感じとか。

以下ネタバレ

ラストもハッピーエンドバレバレなのはいいんだけど、たけのこや桶屋のじいさんや幼馴染の番太のタロウも騙したままってのはちょっと後味悪い。最後に2人が馬で行くシーンでほとぼりが冷めたら便りをするとかなんとか一言セリフ入れるだけで救われるのにねえ。あと1回目に観た時は仲代が父親ってわかってすぐに敵討ちするって決めちゃう助六の心の動きにちょっと付いていけなくって、あれれ?自分と母親を捨てたと思って恨んでたんじゃないの?って思ったんだけど、2度目観たらお墓に供えた花と一緒の墓に入ろうとしていたことで、母親の事を忘れていなかったのを知ってそれでさらりと許せちゃったんだね。ここで妙に重い思い入れとか無くってすぱっと単純に切り替えられるところがベタベタしてなくて良いな。単純でお馬鹿な助六のイイヤツっぷりがこういうところにも現れてるってことでそこを思い入れたっぷりにやり過ぎるとこの映画の魅力の全体のテンポが落ちちゃうんだよね。



結構誉めまくってしまいましたが、岡本喜八の仕事としてはほどほどまあ及第点ってレベル。
岡本喜八は映画も良いけど2時間ドラマでの秀作があるのでどこかで再放送してくれないかしら?アタシが一番観たいのは初期の赤川次郎原作の「幽霊列車」ISBN:4167262029*1浅茅陽子田中邦衛が主演のシリーズ第一作は岡本喜八が監督を務めています。以前はビデオやDVDも出ていたのでレンタル屋で置いているところもあるかも。TSUTAYAの作品紹介のページhttp://www.tsutaya.co.jp/item/movie/view_v.zhtml?pdid=10016294
アタシ以前「あ〜ん」を好きなドラマで埋めるhttp://d.hatena.ne.jp/yukodokidoki/20040514#p1でもエントリーしております。

*1:赤川次郎!?とバカにする無かれ!デビュー作のこの短編シリーズは非常に上質な本格モノでミステりィファンの評価も高いのですよ