ドラマ

今更だけど、「ぼくの魔法使い」前々回について。
みっちーがゲストだった第8話ね。
みっちーとクドカンは現在出てるクイックジャパン*1での対談が初対面だったらしく、この対談自体は冬に行われたので、それが今回のゲスト出演に繋がったのだと思う。
クドカンは役者のあて書きするのが上手いなーって以前から思っていたんだけど、今回はそれを特に強く感じた。
ストーリーはこのドラマのメインストーリー(あってないようなもんだけど)から外れたいわばサイドストーリーで、コレ一篇で一つの独立した話として成立する出来だったと思う。
まもるんこと安部サダヲ演じる田辺まもるの所属する劇団「ディックマードック」の脚本家兼演出家(及川光博演じる)上野パンダ(あんまりにもありそうな名前で笑)の自らの才能に愚問符を投げかける主人公(あえてそう呼ぼう。そう今回の話の主役はまごうことなくみっちーだった)の内的葛藤に主演女優の須藤理彩との劇団内恋愛(「付き合ってるの。良くあることうんぬん・・・」のセリフは劇団系友人&オトコとの交友の多かったアタシにはツボでしたね)が絡む話。

須藤理彩の当り役が女子プロレスラーってのもさすがクドカン良いセンス。
アタシはクドカンの脚本ってのは本スジのストーリーはあってないようなもので構成や遊びの部分が面白いとずっと思ってて(池袋しかり、木更津しかり)
今回ちゃんと「ドラマ」になっていたのには正直驚いた。
でも考えてみると、この第8話は「ぼくの魔法使い」全体から見ると別の話と言っても良いくらい独立した体をなしていて、これはこれで1話分のすべてを遊んでしまったと言う風にも考えられる。
そう考えてみると、木更津で一番面白かった第7話(気志團の出てくる回)も本筋とは関係のないサイドストーリーである。

今回の「ドラマ」に話を戻すとみっちーはファンに「ザマーミロ」って発言をしていたらしい。いわゆる「王子」な自分のイメージ。それも自分自身でプロデュースして作ったその虚像と日々戦っているみっちーの葛藤をそこそこコアなみっちーファンなら皆気付いているのだけど、
クドカンはその辺わかってるね。
盗作ってネタは以前にもドラマでみっちーは演じていて格別目新しいものではないのだけど、
世間に認められたパンダの過去が実は盗作によるものだったことをオリジナルの続編を成功させることで自分を取り戻す話になっていたところが良かったと思う。
これは葛藤の部分がみっちーのキャラクターと脚本の上手さでリアルなものだったからこそ説得力が生まれたのではないだろうか。

モノを作ったり表現しようとしたことのある人間なら誰しも感じたことのあるだろう、自分の才能を信じきれない気持ちの不変なせつなさがしみじみ伝わって来たから。

アイデンティティーを取り戻すことによって恋人も自分の元に戻って来るラストも定番ではあるが気持ち良く
奥貫薫が演じた盗作された側の漫画家志望の女性の方もそれはそれでもう一つのドラマが作れそうな深みがあって、それは彼女が一旦自分の才能を諦めてしまうところにやぱりパンダと同じ自らの才能を信じつづけられない葛藤があったのだろうから。ここんとこがリンクしてるんだよね。
だからこそラストでの「マスクド花嫁」の再演成功を自分のことと重ね合わせて再び自分を取り戻すことが彼女も出来たのだろうから。
クドカン上手いなあ。
1時間で収めたのがもったいないくらいのドラマだった。
「自分が何ものであるのか?」ってのはバカやってるようでこの連続ドラマの底辺の部分にある「テーマ」だということをことさらに感じた回だったと思う。

唯一文句付けるとすれば肝心の舞台がどこが面白いのか伝わってこなかったってとこかな。

*1:はねとびが表紙で渋さ知らズの特集してる号