LAST DANCE

その時達也のドラムの音と私の心臓の鼓動が重なった。
私は左手で心臓を押さえながらただ立ち尽くしていた。
BJC 「LAST DANCE」


7月9日私は横浜アリーナにいた。
10年間ずっと心のどこかでその音を聴きつづけてきたBJCのラストライブ。
名古屋で生まれて育った私が何故か今横浜に住んでいて、こうしてこの場所に立っている。


私にとってこれは確かに運命。


会場に入ってまずギョッとした。
広いフロアは黒いフェンスでいくつもに仕切られている。
話には聞いていたがこんな大きな会場でのスタンディングは初体験。かなりのインパクトだ。
オリの1つに入り、ひざを抱えて床に座る。
同じようにひとりで来ていた女の子が話しかけてくれた。
「いつもブランキーのライブ来ているんですか?」
「ううん、始めてなの。最初で最後になっちゃったけど」
「じゃあファンになったのも最近?」
イカ天の頃から好きだったんだけど、子供が小さくてずっとこられなかったから・・・。」
「今日はお子さんは?」
「夫と留守番してるの。今日来なかったら絶対後悔すると思って、無理して出かけてきたのよ。」
話してるうちに少しづつ高ぶった気持ちが落ち着いてきた。
そう、これが私が生で体験出来る最初で最後のブランキーなんだ。
程よい緊張が心地よい。これでも私は本番に強いタイプ。
ライブはアーティストとオーディエンスの真剣勝負でもあるんだ。
「負けないぞ」心の中でそうつぶやいた。


始まりは「CAT WAS DEAD」
(おや!?)
この曲は彼らがイカ天の第1週でやった、いわばブランキー始まりの曲。
勿論私が始めてブランキーを知ったのもこの曲だった。


セットリストだけ見ると出来過ぎであざとく感じる人もいるかもしれない。
余りにも良く出来たリストだから、ブランキーらしくないって思ったりする人もいると思う。
もうやらないって言ってた曲をラストだからってやってくれるなんて
(特にいちご水と悪いひとたち)
ファンの為のライブをやるブランキー。そんなの彼ららしくない。
私がライブを体験せずリストだけ見ていたらきっと思ったことだろう。


みんなが聴きたかった曲だけど、やってしまったら嫌だと思う自分も確かにいた。
あの日あの場所に行くまでは。


オープニングこの曲が始まったときはおやこう来たのか!と展開がある程度読める気がした。
皮肉屋の私はかすかな不安すら感じた。
「だから解散なのか、」といった淋しさもあった。
けれどそれは違っていた。
なぜならブランキーの3人からはっきりとしたメッセージを感じたから。
はっきりとわたしはそれを受け取った。
間違いなく私のところにはそれが届いた。
3人からの「愛」をびりびりと感じた。思い違いなんかじゃ絶対ない。
それにやられてわたしは倒れそうだったんだから。


比較的前のブロックだった(CC2)私は目を凝らして3人を見つめる。
3人の姿をしっかりとこの目に焼き付けるために。
叫んだ。
「達也!」「ベンジー!」「照ちゃん!」そして・・・「愛してる!」
心を揺さぶられるままにダンスした。
そう最初で最後の「LAST DANCE」を。


「ディスニーランドへ」
この曲のカッコよさと来たらまさに鳥肌もん。
なぜこの曲でよりにもよって手拍子なのか?
思わず「信じられない!」とつぶやいてしまう。
悪い人達の時も同じ。スローテンポになったら手拍子なんて・・・。
大体ブランキーの曲が手拍子でリズム取れるわけないじゃないか。腰でしょ腰!


ベンジーの透明だけど色のついた声最高だった、純粋でありながらセクシー。
さまざまな矛盾に満ちた世界で唯一信じられるもの。
少年性とエロティズムが見事なまでに同居している。
ブランキーはこのベンジーの声があってこそのものだとつくづく思う。


「SATURDAY NIGHT」
CDの何倍もカッコイイ。こんなにライブ映えする曲だったんだ!
透明な色ガラスを透かしてその向こうにもう1つ別の景色が見えた。
あれがブランキージェットシティーだったのか?
彼らがいなくなってもこの町はずっと残るのだ。
彼らは町の英雄であり、同時に誰からも好かれてる友人だった。
彼らの音楽に心引かれたものならだれでもこの町の住人になれる。
その内又ふらりとあの3人が舞い戻ってくることもあるかもしれない。
彼らは言った。
「おれんたあはここに長くとどまりすぎた」
「新しい冒険に出かけるのさ」
我々は英雄の旅立ちを見守るしかないのだ。


「いちご水」
この曲は今まで聴いてなかったと思っていたのだけど、イントロが流れてきてすぐにわかった。
なぜだろう?
ベンジーが歌い始めると客席に静かなどよめきが広がる。みんな待っていたんだね。
いちご水の途中から入ってきた達也のドラム
そのまま自分の心臓の鼓動と重なった。
確かにあの瞬間私と彼らは繋がっていた。
左手で胸をおさえながら、それを確信した瞬間だった。


「Come on」
で歌詞を忘れた(?)ベンジーがイエーイ!で誤魔化すのも いつものパターン。
楽しそうだった。
まるでしめっぽくならないのが ブランキーだわ。
この時のベンジーを泣いていたのでは?という人がいたけれど。
ライブで涙を流す彼はわたしの中には存在しないので、違うと思うことにする。


アンコールでの「悪いひとたち」
ライブが始まるまではやらないで欲しい気持ちの方が強かった曲だけど、素直に聴けた。


何せ、ブランキーと私。繋がってるんだから。
すべてが良かった!


こんなこと言えるようになるとは、5月10日の時点では想像もつかなかったけれど。
正真正銘最良の日だった!もちろんその時アリーナにいたすべての人とも繋がってたはず。


ブランキーとみんなから沢山の愛を貰ったからもう涙は流さない。


み〜んなと握手してハグしてそしてSEXしたんだよきっと。
まさにロックはSEXっていつも思うこと。
ブランキーの音楽は聞き手を選んでる。そして私たちも彼らを選んだ。
選び選ばれた相思相愛の間で交わす最高のSEX。それがライブ。


ライブ後はネットで知り合ったブランキー仲間たちと朝まで語り明かした。
誰もしめっぽくならなかったのはみんな同じ気持ちだったからだと思う。
月曜日6時頃家に帰りついて朝ご飯作ってたら、娘が起きてきて開口一番
「お母さん横アリ行けてよかったね」
ぐっときました。


子供産んだせいで前のように自由にライブには行けなくなってしまったけど、
これはこれで悪くない。
わたしは今の場所を自分で選んだんだから。
まさに♪信じたこの道をわたしは行くだけ!


彼らはもう新しい冒険に旅立っているのだから。わたしも前に進まなくては。
大丈夫ずっとブランキーを聴いてきたのだから充分体は温まってる。いつでも走り出せる。


本当にありがとう!サンキュー!!!
みんなが言っているベンジーのMC
「俺たちのことを忘れんといてね」
よりも達也の
「まあ、いろいろあるけん!はっはっはっ!」
のほうが堪えたな。


だからサンキュー!
サンキュー!ブランキージェットシティー
あらん限りの愛をこめて!


ロッケンロール!!!